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アウトドアのバイブル、The New Complete Walker ニュー・コンプリート・ウォーカー
JUGEMテーマ:地域/ローカル
アウトドアのバイブルと言えば、コリン・フレッチャー/Colin Fletcher著の「The New Complete Walker/ニュー・コンプリート・ウォーカー」です。この本は1968年に出版された「The Complete Walker」がアップデートされて1974年に出版されたものです。
1968年版の「The Complete Walker」は残念ながら日本語版が出版されることはありませんでしたが、改訂版の1974年発行「The New Complete Walker」は米国での出版から遅れること4年、1978年に日本語版「遊歩大全」として国内発売されました。
翻訳は日本に欧米型のアウトドアライフスタイルを紹介し根付かせてくれた先人のひとり、芦沢一洋氏の手によるものでした。さすがにとても分かりやすい内容で訳されています。ご興味のある方はぜひ日本語版を手に取ってみてください。
さてそんなアウトドア・バイブル、「The New Complete Walker」日本語版は北米アウトドアスタイルに首ったけの当時の自分には憧れの書物でした。当時の販売価格は1,600円。非常に高価な本でした。しかも上下巻の2冊構成。2冊購入するとなると3,000円超え。10代後半の自分にはかなり痛い出費だったことを思いだします。
バイブルのページをめくってみると文字ばかり。少し前に発売されていた写真満載のカタログ本「Made in U.S.A.」や豊富な写真やカッコいいイラストの掲載されているアウトドア・メーカーのカタログにすっかり慣らされてしまっていた身には戸惑いを隠せない文字の多さでした。
ところどころに挿絵のようなイラストが載っています。説明のためのものはお世辞にも上手だとは言い難いものばかり。イメージで描かれたイラストは上手に描かれていましたが、それは日本語版だけに加えられたイラストだとわかりました。
いずれにしろ、「The New Complete Walker」はアウトドアのバイブル。写真がなくても、イラストが少なくても、文句を言ってはいけないものだと、しきりに自分を納得させたものでした。
オリジナル「The New Complete Walker」(英語版)と日本語版の違いは追加されたイラストだけではありません。大きな違いがもう二つ。
なんと「The New Complete Walker」(オリジナル英語版)は上巻、下巻の2冊ではなくて1冊でした。しかも本のサイズも違う。日本語版の約1.6倍の大きさです。タテ24センチ×横15.5センチ、厚さ3.8センチ。まさにバイブルという名に恥じない風格、重厚なハードカバーでした。
日本語版の小さなサイズ、薄い表紙、ビニールのカバーなどはどうしても見劣りしてしまいます。せっかくのバイブルが仕様変更されて日本で出版されたのは残念です。日本語版の作りのチープさは否めません。
*1980年代、上下巻2冊の日本語版が改訂され、1冊になりました。
さて、「The New Complete Walker」日本語版を手に入れた当時は、アウトドア・バイブルの肝心な“教え”などはそっちのけで、巻末付録のアウトドア・メーカーのメールオーダー・リストを穴が開くほど見て毎日を過ごしていました。夢のような北米のアウトドアライフに思いを馳せる妄想のガイドブックだったわけですね。
それから何度か読み返しているうちに、無駄なカネを使わずにアウトドアを最大限に楽しむノウハウが詰まった書であることを遅ればせながら知ることになりました。「身も心もひどく痛めつけられ、傷ついたときでも、薬の世話にならずに元気を回復できる唯一の妙薬がウォ−キングである」とコリン・フレッチャーは語っています。また、増加するバックパッカーによって自然そのものの存在が危機に瀕していることへの警告やプラスチック用品の使い捨てに関する倫理的規範といった現在でも問題視されていることが既に書かれています。自然保護に関する教えも学ぶことができます。
コリン・フレッチャーがバークリーの老舗アウトドア・ショップ『SKI HUT』のプライベート・ブランド「TRAILWISE/トレイルワイズ」の製品を愛用していたことは知る人ぞ知る話ですが、「The New Complete Walker」の中でもたびたび登場します。日本版の翻訳者、芦沢さんもTRAILWISEを愛用していたと聞きました。学生時代、TRAILWISE製品販売に少なからず携わっていた身としては、TRAILWISEとThe New Complete Walkerは今もセットで脳裏に刻まれています。
この記事に対するコメント
現在の山岳部、同好会の状況は判りませんが、当時の、年功序列、軍隊的なスタイルに、ある意味反感を抱き、辟易していた時に、この書物と出会った事で、砂丘に散水するが如く、知識、情報を吸収していった覚えがあります。
趣味、遊びの延長であるにも拘わらず、一般的アメリカ人の自然保護に対する本気度、自然に対する親しみ方等に感銘を受け、旧態依然の当時の団体から抜け出した覚えがあります。
間も無く定年を迎える歳にになり、社会生活の中では難しくても、趣味の世界ではこのスピリッツは失っていないと思います。
いつもコメントをありがとうございます。
間もなく定年をお迎えになるとのこと、長いお勤めご苦労様でした。
引き続きモノシリ沼をよろしくお願いします(^^)。