コットンテントの快適さを一度でも味わってしまったら、もうナイロンテントに戻ることはできません。
幸か不幸か、そんな体験は遥か30年前。長野県の廻り目平キャンプ場でした。モノシリ沼王がアメリカのアウトドア製品生協『REI』を通してスペシャルオーダーしたという逸品、アメリカ東部 MOSS Tent Works 社製コットンキャンバスのテント『オプティマム』(写真)に初めて宿泊した体験でした。
MOSSのコットンテントの快適さをザックリ言うと、コットン素材がつくりだすテント室内の開放的な空間とその空気感。MOSS独特の曲線デザインで構成されたテントの美しさと居住性の高さも備わっています。他のナイロン素材のテントでは決して味わうことはできない快適さでしょう。
さて、この快適コットンテントの決定的な体験からほぼ30年。その間、何度かMOSSのコットンテント『オプティマム』を設営することはあったものの、泊まる機会はありませんでした。
ところが先日、再びMOSSのコットンテントで二泊もできる嬉しい機会が訪れました。
一日目は小雨の降る生憎の天候。夕方雨が上がったのはいいのですが、夜中はけっこうな強い風。お隣のヘリノックスのシェルターに寝ていた同行のモノシリ沼人女子は「風が凄くて大揺れで吹き飛ばされるかと思ったわ。うるさいのと怖いのでぜんぜん眠れなかったわよ」と愚痴っていたけれど、我々、モスのコットンテント組はテントが揺れることもなく、風の音に悩まされることもなく、静かな中ですがすがしい朝を迎えることができました。
二日間、終わってみれば、コットンテントの優れた性能と居住性の高さに助けられて、すこぶる快適なキャンプ生活でした。
快適な夜を過ごせたもうひとつの要因はJansportのスリーピングバッグ、ブラスベッド・シリーズの『ブラスベッド 3』のおかげ。グースダウン100%の羽毛の寝袋を崇拝している我が身ですが、羽毛とポーラガードの1980年代のハイブリッド製品、ジャンスポーツ『ブラスベッド1』で寝るのは初の体験。ハイブリッドということで、中途半端な印象があり、いままで何となく敬遠していました。だけど今回、完全に食わず嫌いだったことが判明。使ってみると40年ほど前の製品とは思えない寝心地の良さ、快適な暖かさに感動しました。
ジャンスポーツ『ブラスベッド 3』は床にあたるスリーピングバッグ下部を保温性をしっかり確保するために、断熱素材の潰れや偏りの少ないポーラガードを羽毛に替えて使用。上部はロフトを確保できる羽毛を使うという組み合わせ。これがすこぶる暖かくて快適。スリーピングバッグのカラーリングもヒッピー文化の継承を思わせるビビッドな色の組み合わせがダサカッコ良くて、不思議と元気が出ます。
今回二晩を共にした、30年ぶりのモスのコットンテント『オプティマム』と初使用のジャンスポーツのスリーピングバッグ『ブラスベッド』。二泊のキャンプの夜は、アウトドア製品の温故知新を深く知る、至福の体験でした。
コロナ禍が終息したころには、1970年代スタイルで温故知新のキャンプを楽しみたいものです。古きを訪ね新しきを知るキャンプには意外な新発見もありますからね。